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zoom RSS 誰かを待つ・・・『田村はまだか』 朝倉 かすみ (光文社)

<<   作成日時 : 2009/05/21 22:19  

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 こんなふうに、丁度よい距離から話がきこえてくることって、実はそんなにない。
たまに、ぐっと踏み込まれたり、そっけなく感じるほどだったとしても、
それがまた、丁度よいのだ。

 話の舞台となっているスナック・バー「チャオ!」の雰囲気のような。
黒い表紙のばね式帳面に、胸に残った客のことばを書き付ける、マスターの花輪晴彦のあきらめとしぶとさの混ざり具合のような。

 こんなふうに誰かを待ったことが、あるだろうか。
そして待ちながら、みんな、「田村」によってひき起こされた化学反応のように、
他の誰かのことを思い出す。
 なぜ?
「田村」の衝撃・・・それは、「一番必要なときに、必要なひとに、きちんと自分の心を開く」ということ。
その行為が、あまりにも美しくて、つまり当たり前で力に満ちていたから、「衝撃」だったのだ。
 だから、小学六年生のあの日から、四十歳の現在にいたるまでの間、それは力を持ち続けた。
 
花輪晴彦はひそかに五人の目を見ていった。
 どいつもこいつも、と、喉の奥で少し笑った。やけに澄んだ目をしていやがる。生まれたてみたいな目だ。

そうして、それぞれの次の衝撃が思い起こされるのだ。

 いったん、「田村」の衝撃を受け取った者は、その記憶が受容体となって、次の衝撃、さらにその次の衝撃を受け止めることになる。
なんて幸福なんだろう。
「田村」万歳!
いちばん大切なことを、体ごと心ごと伝えてくれたんだね。

田村はまだか
光文社
朝倉 かすみ


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